代表のことば
こんにちは。
一般社団法人館林くらしとあそびの研究所の代表理事田端智子と申します。
当法人は2020年4月から活動を始めました。そこから多くの方々の協力で、今の活動を継続することができています。
なかなか、「教員をやめて、法人を立ち上げたのか?」のお話をすることがないので、お話していこうと思います。
1 自分の幼少期と育児
私は、青森県八戸市出身でした。高校卒業まで、そこで生活していましたが、「何もない町だな」と思い、大学入学を機に青森を出ました。そして縁あって就職で館林に住み始めました。私の中では「館林は便利で、すぐに都内や隣の県にも行けるから、アクセスのいい町」としか認識がなく「そこで何かをやる街」ではないと思っていました。
数年が経ち、結婚し子どもができ、八戸に帰省することが多くなりました。帰省した際に子どもたちとやったことは、海に入ったり、釣りをしたり、貝殻を拾ったりと自分が幼少期にやってもらったことばかりでした。自分が小さいころに母といっていた百貨店や映画館ももうなくなってしまい、そういう経験は子どもたちとすることができなくなっていました。でも、子どもたちは八戸にある地元の自然で思い切り楽しんでいました。いつも群馬に戻ってくると、我が子は「八戸楽しかった!!また行きたい!」と言ってくれました。私は「何もないと思っていた町なのに、子どもたちを満足させてくれる町なんだ」と思いました。そこで、私自身の気持ちにも変化が出てきました。八戸が「何もない街」ではなく「子どもたちが楽しめる私のふるさと」と。そう思い始めると、建物や流行りのものがあることよりも、残っている自然がたくさんあり、いつも優しく話しかけてくれる人たちがいる八戸の見方がガラリと変わり、帰るたびに改めて好きだなぁと感じることが多くなりました。
そう思い始めたときに、ふと思ったんです。「私が館林を好きだと思っていなくて『アクセスがいい町』としか思っていないのに、この子たちは、館林を出ていくときに『館林に住んでいて良かったなぁ。結婚して、子どもができたら館林に戻ってこよう』って思えるんだろうか?」と。
その時に初めて「自分がもっと館林のことを知って、館林のことを好きになっていこう!」と思い始めた瞬間でした。
2 教師という立場から子どもを見て
私は大学卒業後から教員として働き始めました。群馬県に来て、特別支援学校・中学校に勤務し多くの子どもたちや保護者の皆様と関わってきました。最後に勤務した中学校では、子どもたちと話をしていて、衝撃を受けたことがありました。それはこんな会話からです。
私:「(保健室に来ていた子に)頭痛いの?大丈夫?」
子:「大丈夫です…」
私:「昨日何時に寝たの?」
子:「1時です。」
私:「えっ!?1時って夜中の一時?アッ!それしかないか…。ってかそれまで何してたの?」
子:「部活終わって、弁当食べて、塾行って、帰ってきて11時です。そこからちょっと夜食を食べて、学校の課題やって、風呂に入って、スマホをちょっと見て1時だ!と思って寝ました」
私「結構みんなそういう生活(就寝時間が12時過ぎになること)してるの?」
子:「そうですよ」
その話を聞いて、衝撃でした。そんなに中学生は忙しいのか…と。
そして、その時期に学校で行われた立志式でのことでした。自分のやりたいことや将来の夢を発表しようというものでした。その時に答えてくれた子どもたちの半数は「わかりません」「まだ決まっていません」「夢はありません」という言葉でした。「中学生になり、いろんな情報が入ってくるけど、やりたいことがないのか…」とショックを受けました。
そんなことがあった学校帰りに、迎えに行った我が子が「泥団子」を見せてくれました。「これは〇〇から教えてもらって、こんなにキラキラ光るようになったんだ」「昨日の泥団子はすぐ壊れちゃったけど、今日のは固いよ!!」と教えてくれる我が子を見ました。
その時に「同じものを何度も作りながら日々泥団子を研究している保育園児」と10年たって中学生になり「何もありません。やりたいことがわかりません」といっている中学生と何が違うんだろうと考えました。
3 子どもも大人も失敗をふくめてやり切る経験ができる場を作ろう
その時に、おっちょこちょいな私は、数々の失敗をしながら生活していました。そのことを学校の生徒に話したら「えっ、大人もそんな失敗するんですか?」と驚かれたことがありました。子どもたちにとっては「教員=間違えない人・失敗しない人」と捉えているようでした。
でも、私は、勉強も生活もあそびも「日々実験みたいなものだなぁ」とおもっていたんです。例えば、「今日は卵焼きがうまく巻けなかった!!なんでだろう?」「もしかしたら、こうやればうまくいくかも!?」と考えて次の日にもう一度卵焼きを作ることは、息子の泥団子と一緒だなと感じたんです。失敗すると、「なんでうまくいかなかったんだろう?」と考えるきっかけができ、もう一度挑戦する。その挑戦と振り返りの繰り返しこそが、子どもたちの自信につながっていく、唯一の方法だ!と思ったのでした。
だからこそ、トライ&エラーを繰り返しながら、やり切る経験をさせていく場をこの失敗が多めの私が作ることで、子どもたちに自信をつけさせることができるのではないかと考えました。
そして、私は教員をやめ、館林くらしとあそびの研究所をもう一人の仲間と立ち上げたのでした。
4 法人スタートから現在まで
2020年4月に法人を設立し、この思いに賛同してくれた7名で活動を始めました。
まずは、コロナ禍ということもあり、学校に行かないと選択をした子たちの居場所作りからスタートしました。コロナが流行り始めて、拠点として活用していた公民館を借りることができなくなり、一度この事業継続を断念しました。
そんな中、私が住んでいる館林市内の小学校地区で学童保育に通う児童が慢性的に多い状態が続いていました。「自分の子どもたちの課題も解決できなくて、他の家族や子どもたちの課題を解決できるわけがない!」と考え、それを解決するために2021年4月から公民館を利用し、たてくら学童くらぶを開所しました。そして、2022年4月からは、上赤生田町の古民家へ移転し、今現在もその場所で活動しています。地域で子どもを育てていく環境を地元住民と子育て世代が手を取り合い作っていくために、地元の神社のお祭りや廃品回収、公民館祭りなどにも積極的に参加しています。さらに、移転してからは地元の農家さんやご近所さんからのお野菜の提供があり、たくさんのお野菜たっぷりの手作りおやつも提供できています。
2022年4月からは、コロナ禍で一度事業継続を断念していたフリースクール事業のありがと学舎(週1回~)を再開し始めました。2023年から隔週水曜日に学びの日を設定し、週2回の開所をし、2024年4月から群馬県のフリースクール事業補助金を活用しながら、週3回開所し、現在に至ります。
(日々の保育活動やフリースクール事業については、インスタやブログ、フェイスブックなどで発信しています)
5 そして未来
子どもたちと関わっていく中で、「子どもたちには力がある」ということをいろんな場面で感じることが多くあります。そして子どもたちを通して、大人がつながりあう姿もたくさん見てきました。
だからこそ、子どもたちの力を信じアイディアをもらいながら、「子どもたちの力で地域の課題解決の循環を起こしていきたい」と考えています。まちをつくっていくのは「もの」ではなく「ひと」です。その「様々な人同士がつながりあう」ことで地域のコミュニティができあがり、住んでいるまちが豊かになります。
障がいをもったひとも、子育て世代の家族もおじいちゃん、おばあちゃん、すべての人がつながっていきながら、「子どもたちはそのままでいいんだよ」「生まれてきた子たちを大切に育てていこう」「子どもたちを近所の人として見守っていこう」「大人も今からでも学んでつながっていこう」という風土を作っていきたいと思っています。
会社概要
会社名 | 一般社団法人館林くらしとあそびの研究所 |
所在地 | 〒374-0015 群馬県館林市上赤生田町3783−3 |
連絡先 | Tel. 080-6716-6678 またはフォームからお問い合わせください |